前世の記憶が残っているという人の話

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随分注目が集まっています。私としては、真偽を確かめるすべがない物事について真偽をあれこれいうのは野暮というか、知的に誠実な態度ではないと思っています。また、真偽は別として、人は基本的に正直なものとして考えます。

ところで、この話を全て信じるのなら、わかることは、「この人には前世の記憶がある」ということではないですよね。「この人は昔の人のことを知っている」ということです。

「記憶がある」ということは認めたとして、その記憶がどのような方法でその人に宿ったのかについては、全くとっかかりがないわけです。前世じゃなくてアカシック・レコードかもしれないし、タイムリープかもしれないし、時空を超えたテレパシーかもしれないわけです。

こういう時にすぐ「前世だ」とか思い込んでしまう人って、どういう感覚なんだろうと疑問に思うことがよくあります。

「この人には昔の人の記憶がある」という事実から、「この人には前世の記憶がある」という結論を導くためには「人が昔の人の記憶を持っている時、それはその人の前世の記憶でしかありえない」という前提が必要です。ここに無自覚なのではないかなと思います。

似たような話で、「幽霊を見た」とか「宇宙人を見た」とか言い出す人も、どういう感覚なんだろうなーと思います。

ふつう、例えば誰もいないはずの場所で人のような形をしたモノを見た、という時、それが幽霊だと考える理由はなんでしょうか。もしかしたら宇宙人かもしれないし、妖怪かもしれないのに、どうして「幽霊」になってしまうのか。

「宇宙人を見た」も同様で、それ宇宙人じゃなくて地球内のみ確認知的生命体かもしれないし、魔法使いかもしれないし、妖怪かもしれないし……と数え上げたら枚挙にいとまがないわけです。

これが例えば犬とかだったらわかるんですよね。まず、犬がどのようなものか知っていて、それをみれば犬だと判断できる、という経験に基づく前提があります。だから「犬のような形をしたもの」を見たら、「犬だ」と思うわけですよね。

もっとも、「人のような形をしたものが人じゃなくて幽霊かもしれない」と考える人だったら、「犬のような形をしたものが犬じゃなくて犬の幽霊かもしれない」と考えてもおかしくありません。

もっというと、「人だと思っているあの人が実は幽霊だった」ということもありうるという世界観になるんですけど、「幽霊を見た」っていう人の世界観ってどうなってるんだろう、とずっと思っています。

不思議なことやわからないことは世の中にはたくさんありますよ。でも、体験から言えることは「昔の人の記憶がある」とか「人がいないはずの場所で人のようなモノを見た」ということにとどまるべきであって「前世の記憶がある」だとか「幽霊を見た」ではないはずです。

「信じる・信じない」の話の前に、もっと知的誠実さを持ってものを言ってほしいと思います。