日本語の動詞は原則動作動詞であり、辞書形の時制は未来

例えば、「今行くね」というとき、「行く」の自制は現在でしょうか、それとも未来でしょうか? 未来ですよね。「今から行く」ということです。「もう寝る」というのも、「今寝ている」という意味では無くて、「これから寝る」という意味です。自制でいうなら未来です。

このように、日本語の動詞は辞書形の時制が未来です。この辺が、外国人にとってはかなり混乱の元になっているようです。「日本語を勉強します」というので、これから勉強するのかな、と思ったら、すでに勉強中ということがとても多いです。というか、それを日本語で書いている時点で、「すでに始めてるんだろうな」というのは察しがつきますね。「日本語を勉強しています」あるいは「日本語を勉強中です」というのが正しい形になります。

もう一つの特徴として、日本語の動詞は動作動詞が原則だということがあります。例えば英語だと、動詞は大きく分けて状態動詞と動作動詞に分かれます。

動作動詞は、瞬間的な動作を表す動詞です。動作動詞の例としては、to eat とか to sit などがあります。動作動詞を辞書形(いわゆる現在形)でつかうと、その時制は必ずしも現在ではありません。I study Japanese の study も動作動詞ですが、これはその瞬間に日本語を勉強しているということではなくて、特に時期を指定することなく、習慣的に日本語を勉強しているということを表します。職業あるいはライフワークとして日本語の研究をしているような状態が想定できます。

じゃあ本当に今現在の動作を示したいときはどうするの? というと、現在進行形を使うわけです。 I'm studying Japanese とか、 I'm sitting here とか、そういうのは、「今現在、日本語を勉強しています」「今現在、ここに座っています」という意味になります。

余談ですが、いわゆる「現在時制」を、過去にそのままスライドしてもいわゆる「過去時制」にはなりません。「習慣的に日本語を勉強している」I study Japanese を過去にスライドすると「かつて(=過去の一時期において)、習慣的に日本語を勉強していた」ですが、これを表す英文は I studied Japanese ではなく、I used to study Japanese になります。じゃあ過去形の studied はなんなの? というと、これは「(過去の特定の動作として)日本語を勉強した」という意味になります。「特定の動作」というのは話者が何らかの具体的いな行為を念頭に置いているのが前提です。動作動詞は現在形では特定の動作を示しませんが、過去形になると示すわけですね。英語っていうのは本当にあほな言語だと思いますが、英語に限らず言語というのはそういうものです。

一方、状態動詞は、動作ではなく何らかの継続的な状態を表す動詞です。状態動詞の例としては、 to have とか、to like などがあります。これらの動詞は、辞書形の形(いわゆる現在形)で使った時、これは本当に、現在時制です。I have a dog なら、その瞬間、犬を飼っているということですし、 I like you であれば、その瞬間あなたが好きだということです。

さて、本題の日本語の話に戻ります。日本語の動詞は原則として動作同士です。英語であれば状態同士である to have に相当する日本語の動詞は「持つ」ですが、「今現在持っている」ということを表すのは「持つ」ではなく「持っている」ですね。*1 例えば、「パスポート持ってる?」とか。「パスポート持つ?」とは言いませんよね。もし言ったとしたら、「持ちたい?」という意味になり、これはまさしく未来時制です。

このように、日本語の動詞は、原型が未来の動作を表し、現在の状態を表すには「ている」を接続する必要があるのです。

ところで、「原則」動作動詞と書きましたが、状態同士もあります。それは「いる」と「ある」です。「パスポート持ってる?」を「ある」を使って言い換えるとき、「パスポートある?」と原型になります。「ある」という動詞は、現在の状態を表すのです。

 

*1:なお、書き言葉においては「持つ」が現在の状態を表す意味で使われる場合があります。「持つものと持たざる者」などです。これは英語の影響でしょうか?